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殺意!許されるのなら・・・

2000年6月21日  こくろーた・S [URL]


ある休日の午後3時頃。
O地区方面へ買物に行こうと、私は一人で車に乗ってご機嫌で出発した。


走り始めて3分程だろうか、団地に差し掛かった。

ふと見ると歩道でパジャマっぽい服を着た婆さんが手を上げている。
ああ、横断するのか。そう思った私は道交法にのっとり(?)車を停車させた。

ところが。

その婆さんは横断せず、何故かこっちに近付いて来たではないか。
一応、私も窓を開けてみた。

すると婆さん、

「U地区のMまで往復で乗せてってくれませんか」

と言う。

U地区。はっきり言って正反対方向だ。
第一、私はU地区は知っていたが、そのMという場所は分からないのである。

「Mは知らないんですが」
「UのMは、U駅の近くなんだよね」
「・・・U駅までじゃだめですかね」
「U駅まで行けば分かるんだけどね」
タクシーとか」
「明日給料が入るから、お金無いの」

そんなモン知るかい!!

・・・そして、婆さんの話を要約すると、こうなる。

「病人がU地区のMにいるので、今日迎えに行かなければならない。しかし金が無いので往復で送って欲しい」

金が無ければ他人を足にしていいんかい!

しかし病人が迎えを待っているのでは、このまま走り去るのもなんだ。第一、停車しちゃったし。
この時点で多少の引っ掛かりはあったが、私は婆さんを乗せる事にした。


U地区に向かい車を走らせる。とりあえず、U駅に行った。

「ここからどこか分かりますかね?」
「ああ、右だ」

右折方向に道は2本。

「どっちですか?」
「こっちだね」

言われた道に入る。
しかし、10秒で行き止まる

婆さん、間違ったな?
私はもう1本の道へ入り直した。すると婆さん、

「そのへんの人に道聞いてみな。間違って違う所行ったら大変だからねえ」

・・・聞けとは何だ!? あんたが聞くのがスジじゃないのか!?
そもそも、道をよく分かってねえだろ!?


だがやはり聞くしかない。なにせU地区は不案内。
その時、たまたま道にいたおばさん2人を見つけた婆さんが「あの人達に聞け」と言うので(だからあんたが聞け!)私は道を聞いた。

親切なその2人は、家からメモを持って来て、地図まで書いて教えてくれた。

「Mはねえ、ここからずっと戻って・・・」

なにをー!?

「・・・戻るんですか」(渇いた笑い)

結果、教えて貰った場所はU駅などまるで関係ない方向&場所
その人達もMの正確な位置までは知らないらしい。

「あとはこの道をずっと行って・・・また誰かに聞いた方がいいかもしれないね」
「・・・そうですか」

礼を言ってとりあえず走り出す。
すると婆さん、

「聞いてよかったねえ。関係ない所行ったら困るもんねえ」

あんたが道分かってねえからだろ!

「あんた、道が分かんない時、人に聞くタイプ?」

私は首をかしげてゴマかした。

「道分かんない時聞くタイプ?」
「・・・・・」
「聞くタイプ?」

しつけえよ!!

「さぁー、聞かないっスねぇー」(低音)

俺がヤクザだったら、山の途中で捨てるぞ?
道路のまん中に蹴り出すぞ?

だが私は気弱なのでそれもできず、怒鳴る事すらできない。
このあたりから、車は運転が荒くなっていくのであった。


とにかく、色々あったが目的地は思ったより簡単に見つかった。
辿り着いたのは、一瞬「・・・空屋?」な感じに古くて半分埋もれてる様な家だ。

婆さんがその家の戸を叩くと、中から別の婆さん(婆さんのらしい)が現れた。
その2人のやりとりを、様子から要約すると・・・

・婆さんの姉は病院(入院?)から戻って来たばかり
・近いうち(明日あたり?)に妹の所へ行くはずだったのだが、心配でしょうがない妹が、家の人から何も言われてないのに勝手に迎えに来た
・つまり私はその
手伝いをしてしまった

という事らしい。

姉婆さんは戸を開けた時に「なんで来たの!」とか言ってたし。
だいたい妹婆さんの服とか言動から、まぁそんなこったろうと予想はついてたけど、ここまでその通りとはね。
しかも、姉婆さん、どう見たって妹より元気そう。

妹婆さん、「心配だから家に来い」と姉に言う。
姉は行きたくないようだったが、私の存在もあったので妹の家に行く事にしたらしい。

「送ってもらっていいですか?」と聞かれたが、そもそも婆さんが往復と始めから言っていたので、私はとっくに諦めていた。
ここまできたら戻るべきでしょ、人として・・・

でも普通の人はここで俺に頼まないよね。
思いっきり、見るからに他人なのよ? この妹にしてこの姉あり、ですかねえ・・・


かくして、最初に婆さんを拾った場所まで私は2人を乗せて行った。(運転はやっぱり荒かった)

降りぎわ、礼を口にしながら、姉が「お名前なんていうんですか?」と言ったが、もう関わりたくない私は「あ、いいです」と答えた。
そして走りだそうとする私の車から、婆さん姉妹が団地に去って行く後ろ姿が見えた。

・・・1回だけ聞いて、いいと言われたからってあっさり引き下がるか?
関係無い他人に送ってもらって、見送りもしないか?

いや、実際そうされても私は名乗る気は無かったし、礼なんかぞっとする。やたら感謝されたいわけでもない。
でも日本人の心として、そういう事は常識なんじゃないのか? 俺は間違ってるか!? 甘い幻想か!?(涙)


もう金輪際、手を上げてる人間が居ても止まらんぞ、俺は!
そしてもしあの婆さん達に町で会っても、無視してやる!!


・・・ていうか、絶対向こうが忘れてるだろうけど。


俺の休日の時間とガソリンを返してよ・・・
あと、出発の時の良かった気分をさ・・・


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