2003年1月15日 はっさん24 ![]()
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洋食!気品あふれるご回答
大昔の話で恐縮です。
その昔、超有名な某西武系ホテルのフロントに就職したての頃。
フロントに配属されると、はじめの一年は他のセクションを把握するため、4ヶ月ごとに 「ルーム(部屋清掃)」「レストラン(ウェイター)」「フロント」の各部署で研修を 行ないます。
これは、ちょうどレストラン研修のときの話です。
ある夜、一組のとても上品な身なりの老夫婦(と思われる)がいらっしゃいました。
そして、旬である「うなぎ定食」を2つご注文されました。
仕事にも慣れていた私は、問題もなく厨房にオーダーを通し、お茶などをお客様にサービスしていました。
そしてそのお客様が上品に「うなぎ定食」を食されているとき・・・
その事件は起こりました。
ふと、その老紳士がこちらを見て、何か聞きたそうにしています。
そのため私は、身のこなしもすばやくお客様に近づこうとしました。
しかし、やはりそこはプロ中のプロ。
たまたま居合わせた、そのホテルの飲食支配人(当然黒服)がスッとお客様に近づき、にこやかに、
「お客様、いかがされましたでしょうか」
と話しかけました。
すると老紳士は黒服の支配人に、
「おお、このうなぎなんだけどな、これはヨウショクかね」
すると支配人はにこやかな笑顔をいっそう輝かせて、
「お客様、ご冗談を。こちらは『和食』でございます。ごゆっくり召し上がってくださいませ」
・・・・・。
にこやかな表情のままお客様の前から去っていく支配人。
凍りついた老紳士と奥方、そして近くで聞いていた私。
老紳士と目が合うと、老紳士は寂しげに「フッ」と目だけで笑っておられました。
私はどうしていいかわからず、老紳士の視線を避けるように厨房に下がりました。
すると厨房から先程の飲食支配人の大声が聞こえてきます。
「参っちゃうんだよなぁ、最近の客はぁ!うなぎ定食の事を『これは洋食か?』なんて聞きやがるから、『アホか!』って言いたかったけど、『和食です!』って答えてやったよ」
静まりかえる厨房。
目が点になった、シェフやコックたち・・・
私はここも気まずい雰囲気になっていた事に気づき、また厨房をあとにしました。
もうそのホテルを辞めて10数年経ちます。
老紳士はお元気でしょうか? 支配人はどうしていらっしゃるでしょうか?
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