投稿ネタ887へ  ネタ一覧へ  投稿ネタ885へ

洋食!気品あふれるご回答

2003年1月15日  はっさん24


大昔の話で恐縮です。
その昔、超有名な某西武系ホテルのフロントに就職したての頃。

フロントに配属されると、はじめの一年は他のセクションを把握するため、4ヶ月ごとに 「ルーム(部屋清掃)」「レストラン(ウェイター)」「フロント」の各部署で研修を 行ないます。
これは、ちょうどレストラン研修のときの話です。


ある夜、一組のとても上品な身なりの老夫婦(と思われる)がいらっしゃいました。
そして、旬である「うなぎ定食」を2つご注文されました。

仕事にも慣れていた私は、問題もなく厨房にオーダーを通し、お茶などをお客様にサービスしていました。

そしてそのお客様が上品に「うなぎ定食」を食されているとき・・・
その事件は起こりました。

ふと、その老紳士がこちらを見て、何か聞きたそうにしています。
そのため私は、身のこなしもすばやくお客様に近づこうとしました。

しかし、やはりそこはプロ中のプロ。
たまたま居合わせた、そのホテルの飲食支配人(当然黒服がスッとお客様に近づき、にこやかに、

「お客様、いかがされましたでしょうか」

と話しかけました。
すると老紳士は黒服の支配人に、

「おお、このうなぎなんだけどな、これはヨウショクかね」

すると支配人はにこやかな笑顔をいっそう輝かせて、

「お客様、ご冗談を。こちらは『和食』でございます。ごゆっくり召し上がってくださいませ」

・・・・・。

にこやかな表情のままお客様の前から去っていく支配人。
凍りついた老紳士と奥方、そして近くで聞いていた私。

老紳士と目が合うと、老紳士は寂しげに「フッ」と目だけで笑っておられました。


私はどうしていいかわからず、老紳士の視線を避けるように厨房に下がりました。
すると厨房から先程の飲食支配人の大声が聞こえてきます。

「参っちゃうんだよなぁ、最近の客はぁ!うなぎ定食の事を『これは洋食か?』なんて聞きやがるから、『アホか!』って言いたかったけど、『和食です!』って答えてやったよ」

静まりかえる厨房。
目が点になった、シェフやコックたち・・・

私はここも気まずい雰囲気になっていた事に気づき、また厨房をあとにしました。


もうそのホテルを辞めて10数年経ちます。
老紳士はお元気でしょうか? 支配人はどうしていらっしゃるでしょうか?

− 886 −

投稿ネタ887へ  ネタ一覧へ  投稿ネタ885へ